二年前、子供達の塾のキャンプ合宿に迎えに行った朝、山道でカラスが何かをつついてる、五羽くらいで。よく見ると小さい黒いものを順番につついてる。ゴミではないとすぐわかり、車でそばを通りカラスを追っ払った。よく見ると白黒の子猫。左目が開いてなくて血が流れてる。…とはいっても、野生の子だろう。すごく小さい子猫、ペットショップでも見たことがない。
親猫がいたら人間の出る幕ではないだろうから周りを探した。他には人間も猫もいない、カラスだけ。人間の匂いがついたらこの子はもう二度と戻れない…。でも命に関わる怪我なら大変だし、このままカラスが死ぬまでつつくかもしれないしと怖かった。
とりあえず病院に連れていかなくてはいけないと思い、子供達を迎えに行って、荷物からタオルを出してもらいその子猫を包んで子供達が抱いた。動物病院をスマホで探しながら、向かった。
我が家は動物を飼ったことはないが、みんな動物好きで隣町の牧場に行き、馬や牛を躊躇なく撫でられる。なので、大きい犬や懐かない猫も平気でそばに寄れる子供達。旅行を趣味にしているため動物を飼えば旅行にもいけなくなる為にペットショップに行っても見るだけだった。
病院に到着すると下の息子と私だけが子猫を抱えて病院に入った。受付に事情を伝えて診てもらった。
猫の形態を知らないのに、周りにまだもしかしたら親がいたかもしれないのに、ほっとけないし時間もないしと人間のエゴで連れてきてしまったことを話した。
先生は「その時点できっと親は近くにいなかったし、たぶん捨てられた猫だね。脱水症状もあるし、カラスに襲われて傷だらけだし、連れてきてくれた選択、間違ってませんよ」
私はホッとしました。
エイズ検査虫下しなど、とりあえずしばらく通院はわかったが、家に動物がいたことがなかった為、看護師さん達に何が必要になるか聞き、トイレや砂、運べるゲージやご飯など、言われたものを購入した。そして、飼い主を見つけてあげるまでうちの子になるのだからと、インターネットで調べて、必要になるものをすべて購入した。小さな猫タワーまで(笑)全部で二万円使った。
我が家に連れ帰ったその日は、テレビの下に隠れたり遠いところでおそるおそる見てるけど、少したったら出てきて誰かの足にくっつきお昼寝の繰り返し。家にアイドルがやって来たのですべて猫が中心になってしまった我が家。
丸一日経つと子猫ちゃんはすっかり懐いて女の子だということも病院でわかり、病気も一切なく、ギリギリまで母親に守られてたのかお腹にも皮膚にも虫がいなかった。まだワクチンを打てる大きさではないが、このままいくとみんな別れられなくなると思い、
「この子に名前つけてあげたいけど、まだうちの子にするか決めてないし、動物のお世話は死ぬまできちんとしてあげなくてはダメなの。今は小さくてかわいいかわいい言ってるけど、大きくなって目は潰れたままかもしれないし、懐かない可能性もある、猫は勝手気ままだから。飼い主さん見つけていい?」と聞いた。主人は子供達の返答を聞きたかったようで黙ってる。
子供達は声を揃えて「ちゃんと面倒見る、可愛がってあげる。死ぬまでうちの子にする」と言った。
それから三ヶ月後ワクチンを打ち、その三ヶ月後手術をした。三キロまで大きくなった『ロビンちゃん』はママと長男が大好き。パパと次男はすぐ抱っこしようとするから逃げる。名前を読んだ時は返事をするかわいい猫ちゃん。目の傷は目立たない、目もちゃんと見えているらしい。そしてあとからきた保護猫のクロネコのサボくんにも優しいお姉ちゃん。
あの時、子供達がキャンプにいってなければ
あの時、カラスに襲われてなかったら
あの時、この子が逃げだしてたら
我が家の今のこの幸せを知ることができなかったんだと思う。
ロビンちゃん、あなたはあの時私たちに見つけてもらって幸せですか?
亡くなるその日まで、幸せであってほしい。