[獣医師執筆]もし、犬に咬まれてしまったら・・・咬傷事故の対応、処置について

これから犬を飼い始める方に

はじめに

「散歩中に犬に咬まれてしまった」
「子供が犬に近づいたところ、手を咬まれてしまった」
そんなとき、あなたはどう対応しますか?
突然の出来事に、冷静に対処するのは容易なことではありません。

犬が人間に咬みつく事故(以下、 咬傷事故(こうしょうじこ)) は、犬の飼い主のみならず、誰しもにとって起こりうる出来事ですので、万が一の際に備える目的で、今回の上記テーマについて書いてみました。

咬傷事故の対応

犬が人を咬んだ、咬まれてしまった場合の対応方法としては、
「犬 咬傷事故」等で検索すれば、ほとんどの地方自治体のホームページ上に掲載されていますので、一度目を通しておくとよいでしょう。

飼い主としての対応

飼い主にとって重要なことは
・咬傷事故が発生した場合、保健所等、行政にその旨を届け出ること。
・飼い犬に対し、狂犬病にかかっていないことを証明する鑑定を動物病院で受けさせること


以上、2点は飼い主の義務であることが、各都道府県の条例等で定められています。上記に加え、被害者の怪我の治療の手配や、連絡先の交換も欠かすことはできません。

被害者としての対応

被害者側からは、飼い主に上記2点を確認させることに加え、犬の登録、狂犬病ワクチンの接種の有無を確認しておくといいでしょう。それらが確認できない場合、狂犬病予防法違反のおそれがありますので、飼い主に不審な点がある場合は被害者側からも保健所、警察等に相談しましょう。

民事上の問題

賠償等は当事者間の話し合いになります。行政は基本、仲介等の関与はしません。保険会社の仲介がない自動車事故を想像していただくとわかりやすいかもしれませんが、話し合いで解決に至らない場合、民事訴訟等につながるおそれがあります。

被害者としては、咬まれたことの精神的ショックに加え、自身の傷の治療代や、傷つけられたモノの弁償費用をめぐり、飼い主との示談交渉で多重に苦労することになりますので、飼い主には誠意ある対応が求められるところです。

海外での咬傷事故の対応について

余談になりますが、海外渡航先で犬に咬まれてしまった場合、すぐに患部を洗浄、消毒し、現地の医療機関を受診してください。遅くても帰国先の空港の検疫所にその旨を報告してください。

WHOの報告によれば世界で59,000人の方が狂犬病で亡くなっています(2017年、厚労省ホームページより)。

日本は数少ない狂犬病の清浄国であり、どうしても狂犬病の危機意識が希薄です。海外渡航先で動物の接触が多くなる場合には、事前にワクチンを接種しておいた方がいいでしょう。

まとめ

以上、咬傷事故が起こってしまった際の対応に関して、まとめてみました。犬の飼い主のみならず、皆さんに参考にしていただき、お役にたてれば幸いです。