はじめに
獣医療の発展やペットフード・用品の質の向上並びにオーナーさんの努力などによって動物の平均寿命が延びていることは獣医師兼オーナーとして、とても喜ばしいことです。
ただ、「老化」というのは生き物である限り必ず起こるものであり日常生活の延長上にあります。
少し、考えるのには抵抗があるかもしれませんが大切な家族の一員である猫ちゃんがシニアになった際の共に暮らすポイントを現在自宅でシニア猫(推定14歳♂)と暮らしているオーナー兼獣医師の立場から3点、お伝えしたいと思います。
① 猫ちゃんの年齢を把握しましょう
猫は人間と違って見た目では、あまり老化がわかりにくい動物です。
よく観察すれば昔よりも歩くスピードやキャットタワーなどの段差へのジャンプが少々、遅くなっていたり毛に白いものが混じってきたりしていると思いますが、人間のように顔に皺ができたりはしないため、動物病院で指摘されて初めてもうシニア期に突入しているのかとビックリされるオーナーさんも多いと思います。
猫のシニア期の始まりは、明確な規定が無いため8才からや11才からだったりしますが、我が家では猫の年齢を人間の年齢に換算する方法を取っています。例えば14才ならば人間でいうと72歳となり、前期高齢者の後半に位置することがわかります。
このように猫の年齢では、わかりにくいシニアという区分も人間の年齢に換算すれば、より実感が伴うと思います。
② 猫ちゃんの健康状態を把握しましょう
人間と同様に、猫も高齢になればなるほど病気にかかる可能性は高くなります。100%の病気に当てはまるわけではないかもしれませんが、多くの病気は早期発見早期治療が大切です。
よって、動物病院に抵抗やストレスを感じることが少なく、また検査のために絶食してもその後の摂食行動に影響が表れないなどの通院に強い猫の場合は、ぜひ超音波検査やレントゲン検査等を含む、全身状態がより把握できる猫ドックの受診をお勧めします。
動物病院によっては年齢別の健康診断コースを用意していることも多いため、一度かかりつけの動物病院に相談してみましょう。
動物病院に抵抗やストレスを感じることは少ないが、絶食やレントゲン、エコーなどの拘束される検査に抵抗を示す猫の場合は血液検査並びに尿検査だけでも受診してみましょう。
絶食ではないことやレントゲン、エコーのように画像で確認することはできないため、猫ドックに比べて把握できる健康状態は少ないかもしれませんが、シニア猫に多い慢性腎臓病は発見可能です。
動物病院に非常に抵抗やストレスを感じる猫の場合は、せめて尿だけでも自宅で採取して尿検査だけでも実施しましょう。
尿の採取時間や採取後の保存条件、また採取方法などはかかりつけの動物病院に相談すれば、アドバイスをもらえることができますし、尿の状態によって発見できる病気も数多くあります。
③ 猫ちゃんの終活を考えましょう
これは、多くのオーナーさんが避けたい事柄No1に入るかもしれませんが生き物である以上、旅立ちは必ず訪れます。
特にオーナーさんに考えていただきたいことは、もし悪性の病気や慢性で完治が難しい病気などに猫が罹患した場合、どこまで治療するか、です。
今の獣医療は非常に発展しており、技術的には胃瘻チューブを用いて栄養補給を行うことも血液透析を行うこと等も可能になってきています。
また、入院や手術を行って積極的に治療するか、家での時間を過ごすことを優先するか、など選択肢が多々あります。
実際に猫が病気になってからだと考える余裕がないため、ぜひ元気なうちに、家族の一員である猫の年齢や性格などを最優先して検討してみましょう。
まとめ
いかがでしょうか?この記事を読んでくださったオーナーさんが、少しでも長く猫ちゃんと楽しい時間を過ごしてくださることを心から願っています。