はじめに
皆さんは「エンジェルタイム」という言葉を知っていますか?
都内にある往診専門動物病院「わんにゃん保健室」の院長・江本宏平さんが考案された言葉で、
『飼い主と愛猫の最期の時間』という意味だそうです。
猫が死期を悟ると身を隠すようになったり、やたらと甘えてきたりするなど、
様々な行動をとるのもこの時だそう。
我が家で生まれた子猫にも、今思えばエンジェルタイムがあったなあと思います。
親猫もあまり面倒をみないような、明らかに体が弱いその子猫は、
私の姿を見つけ飛んできては片時も離れず、ずっと撫でて欲しいと鳴いて甘えてきました。
もう30年以上前の話ですが、残り少ない時間、たくさん甘えさせてあげようと誓った瞬間を今でも鮮明に覚えています。
このエンジェルタイム、もちろん猫だけの話ではありません。
エンジェルタイムの実体験
私は3年前、息子のように可愛がっていたコーギーを病気で亡くしました。
発覚した時点で余命半年の宣告でしたが、とても過酷な闘病生活を続けながら2年近く頑張ってくれていました。
それでも、刻々と近づいてくるさよならの時間。
次第に散歩できる距離が短くなり、常に過ごしやすい場所を求めて、家中をグルグルグルグル。
息も荒くなり、ついにはご飯を食べられなくなってしまったのです。
私は、とうとうその時が来てしまったと覚悟しました。
それからの一日一日は、悲しみを押し殺し全力で彼のサポートに徹しました。
すると何日か後、ほとんど食べなかったご飯を突如ペロリと平らげたのです。
私たちは驚いて、そしてまさかの奇跡を望んで、急いで新しいご飯を買いに行きました!
またご飯を食べられるかもしれない、少しでも元気になるかもしれないと期待して…
…けれど、それが最後の食事でした。
彼が亡くなった後、お世話になった獣医さんにその話をしました。
すると、医師の目から見ればおそらく本人は全く食べたくないけれど、
飼い主を安心させようと無理して食べる子も多いんだよ、ということでした。
飼い主を元気づけたくて、喜ばせたくて、大丈夫だよ、ご飯食べられるよ、心配しないでって…
もちろん科学的根拠はありませんが、亡くなる前にそんな気遣いを見せる子もいると、経験から実感しているそうです。
他にも、愛犬は最期の時間に、家族それぞれに役割を与えていたようにも思います。
私は生涯最後のトイレの始末。夫は詰まってしまった鼻の掃除。
そしてきちんと身支度をして、いつも一緒にいた母の隣で旅立ちました。
彼がくれたこの時間のおかげで、悔いなく見送ることができた私達は、
寂しくも安堵し、救われた気がします。
まとめ
少なくともこのような体験をした飼い主として思うこと。
確かにお別れは寂しく、耐え難い悲しみです。
しかしその時が来てしまったのなら、側にいて撫でるだけでもいいんです。
その子なりのエンジェルタイムを、どうか大切に過ごしてあげて欲しいと思います。